少子化が受験市場に与える影響と今後の展望

日本の少子化は、受験市場に大きな変化をもたらしています。18歳人口の減少により受験生の数が減り続ける一方で、塾や予備校の売上は増加するという矛盾した現象が起きています。本記事では、少子化が受験市場(学習塾・予備校業界、大学入試)に与える具体的な影響と、今後の展望について詳しく解説します。受験を控えるお子さんを持つ保護者の方も、業界動向を把握したい方も、ぜひ参考にしてください。
少子化が受験市場に与える影響と今後の展望
日本の少子化は、受験市場に大きな変化をもたらしています。18歳人口の減少により受験生の数が減り続ける一方で、塾や予備校の売上は増加するという矛盾した現象が起きています。本記事では、少子化が受験市場(学習塾・予備校業界、大学入試)に与える具体的な影響と、今後の展望について詳しく解説します。受験を控えるお子さんを持つ保護者の方も、業界動向を把握したい方も、ぜひ参考にしてください。
少子化の現状と受験人口の変化
日本の少子化は深刻な状況が続いています。18歳人口は1983年の約172万人から2023年には約110万人まで減少しており、約40年間でおよそ64%も減少しました。この傾向は今後も続くと予測されており、2032年には約98万人、2040年には約88万人にまで落ち込むとされています。
大学受験人口も同様に減少しています。1992年度にピークを迎えた約121.5万人から、2025年度には約65.6万人程度まで減少する見込みです。これはピーク時のわずか54%に過ぎず、受験市場の規模が半分以下に縮小していることを意味します。
しかし、この数字だけで「受験市場が衰退している」と判断するのは早計です。受験生の数は減っていても、一人ひとりの受験生に対する教育投資は増加しており、市場の構造が大きく変化しているのです。
| 年度 | 18歳人口 | 大学受験者数 |
|---|---|---|
| 1983年 | 約172万人 | - |
| 1992年 | - | 約121.5万人(ピーク) |
| 2023年 | 約110万人 | - |
| 2025年(予測) | - | 約65.6万人 |
| 2032年(予測) | 約98万人 | - |
| 2040年(予測) | 約88万人 | - |
学習塾・予備校業界への影響
売上は増加・倒産も増加という矛盾
少子化が進む中でも、学習塾の2022年の売上高は5,549億円と、過去5年で1,000億円以上増加しています。これは、少子化で子どもの数が減っても、一人の子どもへの教育投資が増えているためです。特に一人っ子世帯では、子ども一人に集中して教育費をかける傾向があり、塾・予備校への支出も増加しています。

一方で、2024年の学習塾倒産件数は53件で2000年以降過去最多を更新し、負債総額も117億4,400万円と過去最多となりました。この矛盾した現象は、市場が「大手強・中小弱」という二極化が進んでいることを示しています。
大手への集約とM&Aの加速
少子化と競争激化により、学習塾業界では大手へのM&Aが相次いでいます。資金力のある大手塾は、AIを活用した個別最適化学習やオンライン授業を積極的に導入し、少ない生徒数でも効率的に収益を上げる体制を整えています。
一方、中小の塾は生徒を集めることに苦慮し、大手のフランチャイズに加盟するか、閉校を余儀なくされるケースが増えています。今後もこのM&Aによる業界集約は加速すると予測されています。詳しくは中学受験の塾選びガイドも参考にしてください。
講師不足の深刻化
少子化は塾の生徒数だけでなく、講師の確保にも影響を与えています。多くの学習塾では大学生を講師として採用していますが、18歳人口の減少により大学生自体が減少し、講師の採用が困難になっています。特に地方では深刻な問題となっており、オンライン授業への転換が加速する要因の一つとなっています。
大学入試への影響
私立大学の定員割れ問題
少子化の直接的な影響として、大学の定員割れが深刻化しています。2020年には私立大学の約30%が定員割れを起こしており、この割合は今後さらに増加すると見込まれています。
これにより「受験生を選ぶ」時代から「受験生に選ばれる」時代へと大学の立場が変化しています。多くの大学が独自の魅力づくりや、入試制度の多様化(推薦入試・総合型選抜の拡大)を進めています。
難関大学は依然として高倍率
一方で、東京大学をはじめとする難関国公立大学や一部の有名私立大学は、定員を維持しながら高い倍率を保っています。受験生の数が減っても、「良い大学に入りたい」という受験生の上位志向は変わらず、むしろ一部の難関大学への集中が高まる傾向があります。
旺文社の調査によると、真の意味での「大学全入時代」(志望者全員が大学に入れる状態)が来るのは2035年頃と予測されています。しかし、これは「どこかの大学には入れる」という意味であり、志望校に合格できるかどうかは別問題です。
詳しくは中学受験の倍率・志願者数の推移と今後の予測もご覧ください。
受験市場の新たなトレンド
推薦・総合型選抜の拡大
少子化に対応するため、多くの大学が推薦入試や総合型選抜(旧AO入試)の枠を拡大しています。一般選抜だけでなく、多様な入試形式で受験生を確保しようとする動きが加速しています。

2025年度入試では、新課程への移行と重なり、学校推薦型・総合型選抜がさらに拡大しました。これにより、従来の「一発勝負の入試」から「多様な入試機会」へと変化が進んでいます。
オンライン教育の台頭
コロナ禍を契機に普及したオンライン学習は、少子化時代の受験市場において重要な役割を果たしています。地方に住む生徒でも質の高い学習環境にアクセスできるようになり、都市部の大手塾や有名講師の授業をオンラインで受講できるサービスが急速に拡大しています。
オンライン教育の普及は、英語4技能導入の最新動向と対策やプログラミング・STEM教育の受験対応といった新しい入試トレンドへの対応も容易にしています。
AI・テクノロジーの活用
大手学習塾を中心に、AIを活用した個別最適化学習の導入が進んでいます。生徒一人ひとりの習熟度に合わせた問題提供や、弱点分析・学習計画の最適化が可能になり、少ない講師数でも効率的な指導ができるようになっています。
思考力・判断力を問う新型入試や適性検査型入試の増加といった新しい入試形式への対応にも、AIを活用した学習が効果を発揮しています。
今後の受験市場展望
2030年代に向けた市場変化
今後10〜15年で、受験市場は大きく変化すると予測されています。主なポイントを整理します。

市場の二極化がさらに進む
大手塾・予備校への集中が加速し、地域の中小塾の閉鎖が相次ぐ可能性があります。一方で、特定の分野に特化した専門塾や、オンラインを活用した全国対応の塾が台頭してくると考えられます。
大学の統廃合が加速
定員割れが続く私立大学の統廃合が加速します。2035年頃には定員割れが一般化し、大学が「選ぶ」ではなく「選ばれる」立場が明確になります。これにより、大学のブランド力・就職実績・学習環境の差がより重要な選択基準になります。
中学受験の相対的な重要度上昇
大学入試が易化する中で、良い大学に進学するための「先行投資」として中学受験の重要度が高まる可能性があります。難関中学から難関大学というルートの価値が維持・上昇するためです。詳しくは中学受験入門ガイドをご参照ください。
受験生・保護者へのアドバイス
少子化が進む受験市場では、次の点を意識することが重要です。
- 大学を慎重に選ぶ:定員割れが増える中で、大学のブランドよりも就職実績・教育内容・立地を重視した選択が重要になります。
- 入試形式の多様化を活用する:総合型選抜や推薦入試を積極的に活用することで、実力に合った大学への進学機会が広がります。
- 塾選びは慎重に:業界の淘汰が進む中で、長期的に信頼できる塾・予備校を選ぶことが重要です。財務状況や実績を確認しましょう。
- オンライン学習を取り入れる:地域に関係なく質の高い学習環境にアクセスするため、オンライン教育を積極的に活用しましょう。
まとめ:少子化時代の受験市場を正しく理解する
少子化は受験市場に複雑な影響を与えています。受験生の数は減少しているものの、一人ひとりへの教育投資は増加しており、大手塾の売上は伸び続けています。一方で、中小の塾・予備校の淘汰が進み、私立大学の定員割れも深刻化しています。
今後は、業界の二極化がさらに進み、質の高いサービスを提供できる大手や専門特化した事業者が生き残り、対応できない事業者は淘汰されていくでしょう。大学も同様に、生き残りをかけた差別化戦略が求められます。
受験生や保護者の方は、この変化を正しく理解した上で、長期的な視点で受験戦略を立てることが重要です。日本の中学受験制度の仕組みと歴史的変遷や日本の高校受験制度の仕組みと地域差も合わせて読むことで、受験市場全体の変化をより深く理解できるでしょう。
少子化という逆風の中でも、受験市場は変化しながら生き残っています。変化の方向性を理解し、賢く受験戦略を立てることが、これからの時代に求められる姿勢です。
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